「うちの家族では相続関係について話し合って誰が財産を取得するか決めてある。」

とか

「遺言書を書いてあり、家族にも話してあるので大丈夫!」

なんて安心していませんか?

相続はそこまで準備していても思い通りにいくとは限りません。

自分だけでなく財産を受け取る側の対策も考えておかないといけない事例を紹介いたします。

 

認知症で後見人が選任されると家族以外と相続について話会わなければならなくなる

相続財産を受け取る側の人が認知症になってしまうと遺言があってもややこしいことになります。

認知症で物事を判断することができなくなる場合には、「成年後見人」という人が家庭裁判所によって選任されることになります。

成年後見人は、本人の代わりに財産を管理したり、意思表示をする人です。

一般的には、弁護士、司法書士、社会保険福祉士といった専門職が選任されるケースが多いです。
財産が2000万円ほどあると家族が成年後見人になることは難しいでしょう。

相続がおこった場合、認知症の家族のかわりに専門職と遺産の分け方について話会うことになります。

 

成年後見人の判断は非常に硬直的

成年後見人は認知所になった人の代わりに判断をすることになりますが、成年後見人が自分の考えで自由に判断できるわけではありません。

例えば、奥さんに全部の遺産を渡すという遺言を書いていて、家族も全員納得するだろうと思っているようなケースでも、子供が認知症になって成年後見人が付いている場合は、子供の成年後見人から法律上定められた相続分を奥さんに対して請求されてしまいます。

それぞれ相続人には法律上確保された最低限度の財産があり、これを「遺留分」といいます。

成年後見人は、被後見人の遺留分が侵害されている場合には、必ずその分を請求しなければなりません。

この請求を行わなかったり、法律上の遺留分割合より安易に妥協した場合には、のちに善管注意義務違反による損害賠償請求の対象になることもあります。

ですので実務上、認知症の人が自ら判断したのであれば請求しないであろう場合にも、上記のことを考えて請求せざるを得ないケースとなります。

奥さんに渡そうと思っていた財産の一部が認知症の子供との共有になってしまいます。

例えば、認知症の子に子供がいなかった場合、子が亡くなればその子の配偶者に、配偶者が既に亡くなっている場合は配偶者の親に、配偶者の親が亡くなっている場合は配偶者の兄弟に遺産が引き継がれます。

容易に大変なことになるのが想像できますね。

家族がみんな納得していて遺言で対策を取ったとしても思い通りに財産を渡せるわけではないことがご理解いただけると思います。

 

認知症の相続人がいる場合の財産の残し方

認知症にいつなるのかは誰にも分からないのでやっかいな問題となります。

そうしたなかで、相続財産を残す上でのポイントは

  • 自分が生きているうちにきちんと話合いをしておく
  • 遺言書を書いて残された家族の手続の負担を軽くする。
  • 遺留分の侵害はなるべく避ける
  • 生前贈与、民事信託などで相続人の認知症の対策を取っておく

といったことが挙げられます。

例えば、生命保険を活用して相続税を抑えながら遺留分侵害の対策を取ったり、
家族会議をひらき信託契約で相続時の財産の帰属先を確定してしまったりすることが
考えられます。

相続が争いになって家族に迷惑をかけることになってしまうのは相続対策不足が原因です。

日本ではまだまだ相続対策が一般的とは言えません。争いごとが起こらないよう相続対策は一般的になってほしいですね。

相続を思い通りに行うのは想像以上に大変

家族で話合いをしたとか遺言を書いたといったことで相続対策は万全とは限りません。

相続対策はもっと広い視点でいろいろなケースを想定しなくてはいけないところが難しいですね。